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18年ぶり対峙「反省していないのですか」と菅家さんの声に、元検事は謝罪せず 足利再審(産経新聞)

 【元検事語る(4)】《宇都宮地裁で22日開かれている足利事件の再審第5回公判。午前に引き続き、午後1時からは、捜査段階で菅家利和さん(63)の取り調べを担当した森川大司・元検事に対する証人尋問が行われる》

 《午前の公判では、21日に引き続き、別の女児殺害事件で菅家さんを取り調べた録音テープが法廷で再生された。21日には、テープが再生される最中に、気分が悪くなり一時退廷した菅家さん。22日午前も、DNA型鑑定の内容を突きつけられ、涙で「自白」する様子が法廷に生々しく響くと、机をけって怒りをあらわにする場面もあった》

 《グレーのスーツ姿の森川元検事は午後1時2分、しっかりした足取りで、傍聴席から証人席に立ち、宣誓書を読み上げた。18年ぶりの対峙(たいじ)となる菅家さんはグレーのスーツ、黒のネクタイ姿で目をつぶったまま弁護人席に座っている。佐藤正信裁判長に促され、森川元検事は証人席に座った》

 《弁護人側から質問が始まる。最初に質問に立ったのは、菅家さん本人だった》

 菅家さん「森川さん。11年半もの間、無実の罪で捕まっていました。あなたはこのことをどう思いますか」

 《低く重い声で語りかけるとともに、鋭い目線を森川元検事に向ける》

 森川元検事「私は当時、主任検事として証拠を検討し、その結果、菅家氏が(松田)真実ちゃんの殺害事件(足利事件)の間違いないと判断しました。新たなDNA型鑑定で犯人でないとうかがって、非常に深刻に思っているところです」

 《森川元検事は「深刻に思っている」とは述べたものの、謝罪するまではいたっていない》

 菅家さん「宇都宮拘置支所で取り調べを受けたとき、全部やっていないと正直に話しました。このことをなぜ弁護士や裁判所に伝えなかったのですか」

 森川元検事「宇都宮拘置支所で、真実ちゃん事件の事実関係よりも(福島)万弥ちゃん事件(昭和54年の女児殺害事件)と(長谷部)有美ちゃん事件(59年の女児殺害事件)の2件の余罪について、取り調べていました。そのいきさつ中で真実ちゃん事件に触れたとしても、あくまで余罪の取り調べをしていたものです。逐一報告する必要はないと思っていました」

 《冷静に、はっきりと答えていく森川元検事。しかし、「反省」の色が見えないことに菅家さんの怒りは徐々に高まっていく》

 菅家さん「自分に無実の罪をきせたことについて、謝ってください」

 森川元検事「先ほど申したとおり、私も厳粛に、深刻に受け止めています」

 菅家さん「私の家族は苦しんでいるんですよ」

 森川元検事「申したとおりです」

 菅家さん「大変なことですよ」

 森川元検事「…」

 菅家さん「どう思います」

 森川元検事「今申したとおりです」

 菅家さん「反省していないのですか」

 《ここで、検察側が質問の趣旨がずれているとして制止に入った。しかし、菅家さんは「黙っていてくださいよ。あなたには関係ないでしょ」と、怒りを爆発させてくってかかる》

 菅家さん「私に『人間性がない』といったが、あなたの方が人間性がないんじゃないですか」

 森川元検事「人間性がないといったつもりはないです」

 《白熱する事態を押さえようと、両サイドに座る弁護人が腕を押さえて座るように要請した。冷静に戻ったのか、菅家さんは軽く一礼して質問をやめ、その場に座り込んだ。続いて、弁護側が質問を始める》

 弁護側「取り調べテープを聴いてきましたか」

 森川元検事「聴いていません」

 弁護側「今日の午前中に流された平成4年12月8日の取り調べで、『誰でも過ちがあるからこういう裁判になる』といいましたよね」

 森川元検事「記憶が曖昧(あいまい)ですが…」

 《当時の記憶を呼び戻そうとする弁護側だが、森川元検事は不確実な返答に終始する》

 弁護側「証人は過ちを犯したのでは?」

 森川元検事「過ちとはいろんな意味があるので、どこをさしているのか…」

 弁護側「『人間として誠実さを失ったら終わりだ』といいましたね」

 森川元検事「いったかどうかは…」

 《ここで、弁護側はこれまでの捜査と公判の経過を、法廷の両脇に設置された大型スクリーンに映し出して説明していく。取り調べの経過や、菅家さんが家族に無実を訴えて送った14通の手紙の送付時期などを細かく列記。強引な事件の立証状況や、菅家さんの訴えが受け入れられなかった当時の捜査のおかしさを印象づけたいようだ》

 弁護側「証人が事件の捜査に関与したのはいつですか」

 森川元検事「平成3年12月ごろからです」

 弁護側「(菅家さんが)任意同行される前に本件(足利事件)にかかわっていますよね」

 森川元検事「そういう記憶は…」

 弁護側「菅家さんが任意同行された後、どんな性格の人だと判断していましたか」

 森川元検事「非常に抽象的で答えにくいのですが…。おとなしいタイプですか」

 弁護側「人に対して反論できるかそうでないかは?」

 森川元検事「程度の問題はあったが、強く言うと反論できない、おどおどした感じです」

 弁護側「職場で女性と議論になっても反ばくできないというのは」

 森川元検事「記憶にないですね」

 弁護側「科警研(科学警察研究所)の結果を知ったのはいつですか」

 森川元検事「この事件の捜査に入る前に、『かかわるなら主任検事をしてもらう』といわれていました。そのとき概略を聞きましたが、資料をもらったか…」

 《相変わらず曖昧な答えが続き、弁護人の語気も強まっていく》

 弁護側「DNA型鑑定をどう考えていましたか」

 森川元検事「DNA型鑑定は有力な証拠だと思っていました」

 《DNA型鑑定は、菅家さんが犯人とされた重要な証拠と判断されていた。その当時の考えを、森川元検事は改めて法廷で述べた》

 弁護側「DNA型鑑定だけでは逮捕状を取れず、自白があって初めて逮捕状が取れると上司から聞いたことはありますか」

 森川元検事「それに近いことはいわれた記憶があります」

 弁護側「自白がなければ逮捕状が取れない事件なんですね」

 森川元検事「そういうふうに認識しています」

 弁護側「任意同行当日の朝刊に報道されたことが、自白を取らなければいけないというプレッシャーになったのではないですか」

 森川元検事「ちょっと分かりません」

 《DNA型鑑定だけでは証拠として不十分だったことが分かっていたため、自白を引き出す厳しい取り調べになったのだろうか。菅家さんはじっと目を閉じ、厳しい表情で口を真一文字にしたまま、その答えを聞き入った》

 =(5)に続く

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